位置情報を活用した「オムニチャネル」や「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」への取り組みが、小売業で本格化している。導入が進んでいるのは都心の大型事業者だけではない。地方での活用事例も続々と登場しているのだ。
株式会社ブログウォッチャーは、スマートフォンに特化したO2Oソリューション「プロファイルパスポート」を提供。「プロファイルパスポート」の導入企業は地方も含め50社を超え、同種のソリューションの中でも、実績はトップクラスだ。本稿では、O2Oや位置情報を活用した施策について、ブログウォッチャーの酒田理人氏、萬田大作氏に話を伺った。 [sponsored]
萬田大作 株式会社ブログウォッチャー事業開発グループ開発チームプロダクトマネージャー。数社での勤務を経て株式会社リクルートに入社。2014年より、ブログウォッチャーに出向。
酒田理人 株式会社ブログウォッチャー事業開発グループプロファイルパスポートプロデューサー。大学院卒業後、2008年に株式会社リクルートへ2010年より、ブログウォッチャーへ出向。

導入端末数1000万超えのO2Oソリューション
―まず、現在「プロファイルパスポート」のプロデューサーを務めている酒田さん、足跡をお聞かせいただけますか?
酒田 私は高専時代からずっとゲームの開発者になりたいと思っていたのですが、就活するときにはゲーム業界にあまり夢を見られなかったんです。それで、ITに力を入れているところが面白そうだと思って、リクルートに進みました。
―そこからブログウォッチャーへ移ったきっかけは?
酒田 このブログウォッチャーは電通とリクルートのジョイントベンチャーです。その縁もあるのですが、実は、私は学生時代にブログウォッチャーでインターンをしていまして、当時の社長からお声掛けいただきました。
―それはいつ頃でしょうか?
酒田 2010年ですね。ブログウォッチャーが新規事業として「プロファイルパスポート」の研究開発を始めた頃でした。入社後、私は技術開発や営業を担当し、2011年に「プロファイルパスポート」がサービスインしました。2014年に体制の変更があり、私は開発の現場からは離れ、事業全体を見る立場になりました。ちょうどその頃、萬田が入社してきました。
―萬田さんの足跡もお聞かせください。
萬田 私は大学時代、ナビゲーションの経路検索エンジンの研究をしていました。その教官がナビタイムの創業者と同じ研究室でして、私もナビタイムに入社しました。ナビタイムでは、経路検索エンジンや地図描画エンジンの開発をしましたね。その後、フィーチャーフォンの公式サイトを開発する会社や、基幹システムの開発を行う会社など、SIer(システムインテグレーター)数社に勤めました。
―ずっと開発に携わっているのですね。
萬田 そうですね。アルゴリズムというよりは、大量データの基盤を作る業務にずっと関わっていました。2011年にリクルートへ入社し、開発の責任者や、事業開発グループのマネージャーを務めた後、2014年に開発の責任者として、ブログウォッチャーへ出向しました。
―「プロファイルパスポート」はどのようなソリューションなのでしょうか?
酒田 「プロファイルパスポート」は、スマートフォンアプリ向けのO2Oソリューションです。「SDK(ソフトウェア開発キット)」と「WEBベースの管理画面」を提供しておりまして、アプリに組み込むことで「プロファイルパスポート」の機能をご利用いただけます。
― どのような機能があるのでしょうか?
酒田 「プロファイルパスポート」の主たる機能は、スマートフォンアプリにプッシュ通知で情報配信をすることです。その大きな特徴は、ジオフェンスと呼ばれる位置情報関連の分野に特化していること。「GPS」「ビーコン」「Wi-Fi」という3つの技術を利用して端末の位置を把握し、特定のエリアにいるユーザーに情報を配信することが可能になります。
― 特定のエリアのユーザーに、オンラインから実際の店舗への送客をするわけですね。
酒田 そうですね。ユーザーの位置情報に合わせて情報配信することで、送客支援に利用ができます。
―「プロファイルパスポート」の一番の強みはどこにありますか?
萬田 「GPS」「ビーコン」「Wi-Fi」という複数の技術を使った配信を統合して利用できることですね。また、リクルートを始めとした多くの企業に導入されている実績も強みだと思います。
―どのくらいの企業に採用されている?
萬田 50社以上に導入されています。MAU(月間アクティブユーザー数)が500万以上あるアプリにも採用されておりまして、「プロファイルパスポート」が入っている端末の数は1000万以上です。
アプリの効果は驚愕の8倍!
― 導入事例を具体的にご紹介ください。
酒田 例えば、東京や関西など複数のスーパーマーケットチェーンにアプリをご利用いただいています。いずれも上手く活用されていますね。全国で100件以上のスーパーマーケットにコンサルティングを実施しているリレーションズという企業があるのですが、リレーションズさんと私たちの共同でいくつかのスーパーさん向けにアプリパッケージを開発しました。
― どのように活用されているのですか?
酒田 スーパーではチラシに年間数億円の予算を掛けているところも少なくないのですが、チラシがだんだんお客様に届かなくなっているという課題があります。特に若い世代の新聞購読数は減っています。ですから、チラシの予算の一部を使って、チラシの代替としてアプリを活用しようと取り組みが始まりました。アプリの機能としては、店舗から数キロくらいの距離に近づいたタイミングで、その店舗の情報をプッシュ通知で配信するようなものがメインです。
― 開封率はいかがですか?
酒田 メルマガの開封率ってだいたい10%とか、もっと低いところもざらにあるのですが、各スーパーさんのプッシュ通知は35%以上の開封率をキープ出来ているところが多いですね。
― 3倍以上の数字が出ているのですね。
酒田 実は、プッシュ通知も様々な企業がたくさん打っていますから、メルマガと同程度の開封率に下がっているところも多くあります。それでも35%以上の数字を保てているのは、位置情報による配信のタイミングがユーザーのメリットにもなっているからだと思うんです。タイミングがいいので、「このスーパーのプッシュ通知は開封する」と行動様式に組み込まれているユーザーが多いのではないでしょうか。
― どのような情報を発信しているのでしょうか?
酒田 チラシではその日の情報はもちろん発信できません。しかし、アプリでは各店舗独自の特売情報ですとか、その日の朝仕入れた魚介類の紹介なんかを発信していますね。アプリには、CMS(コンテンツマネジメント・システム)も一緒に入っていますので、各店舗のスタッフさんがんが簡単に最新の情報を発信することができるわけです。店舗のスタッフさんも「他の店舗には負けたくない」とコンテンツ作りに楽しんで取り組んでいるそうです。
― これはチラシでは実現できませんよね。
酒田 さらに、単に情報を発信するだけではなく、「どんなユーザーにどんな記事が刺さったのか」というデータが貯まっていきます。実は、このアプリではインティメート・マージャ―さんのDMPと連携しています。ですから、ユーザーに属性を入力させなくても、ウェブの行動履歴を使って、ある程度ユーザーの属性が推定できるのです。
―具体的には?
酒田 「30代男性に肉の紹介記事が読まれている」「20代女性に野菜の紹介記事が読まれている」といったことがわかります。単に情報を配信して終わりではなく、こういったレポートを経営企画部などで活用しているそうです。
―しかし、アプリがダウンロードされなければ活用できないわけですよね?
酒田 これは、長年スーパー向けのコンサルを手掛けるリレーションズさんならではのすごいところだと思いますが、実際の店舗にリレーションズのスタッフを派遣し、お客様にダウンロードしてもらうところまで支援しています。「毎日100人にダウンロードさせる」というようなことを徹底するんです。また、「アプリを見せると10%オフ」というキャンペーンを定期的に実施されるスーパーもありますね。「アプリを見せると10%オフです」と全員で声掛けされたりしています。結局は、アプリと言えども「リアルな接点」での訴求が一番効くということですね。
―チラシと比べて効果はいかがですか?
酒田 アプリの方が高い費用対効果が出ています。アプリ導入の初期費用を除き、ランニングコストだけで考えると、「お客様1人を店舗に送客するのにかかる費用」は、チラシと比較するとアプリは8分の1しかかかっていないという数字も出ています。
―すでに成果が出ているのですね。
酒田 今後アプリの利用者が増えれば更に効果は高まると思います。最終的にチラシをゼロに近付けることができるならば、全店舗にアプリを導入することで、販促費を10分の1以下にすることも可能かもしれません。
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