ビーコンを使ったシステムを5分の1のコストで構築
―ビーコンを活用した事例もご紹介いただけますか?
酒田 昨年リクルートと協力し、全国に1万個以上のビーコンを設置しました。駅、地下街、飲食店、デパート、小売店などにビーコンを置いて、数十パターン以上もの使い方を実験しました。例えば、居酒屋だったら、お店の前に来たタイミングで「ハッピーアワーで1杯無料」とプッシュ通知を送ったりするわけです。
―効果はいかがですか?
酒田 通常のプッシュ通知はもちろんのこと、GPSを使ったプッシュ通知よりも高い開封率が出ましたね。やはり、情報の文脈がユーザーにわかりやすいほど受け取ってくれる確率も高いわけです。今の事例では、実際の来店率でも、店舗の前からプッシュ通知を送ったほうが、効果的だという数字が出ています。
萬田 実は、このビーコンの仕組みを構築するにはとても大変だったんです。
―どのような点に苦労されましたか?
萬田 ビーコンの数も多いので、ビーコンから飛んで来るデータの量が膨大になって、そのデータをいかにさばいていくかという課題があったんです。大量のデータを転送、処理することに特化した「fluentd」や「Hadoop」というオープンソースソフトウェアを使って、自分たちで実装することも考えたのですが、結局「トレジャーデータサービス」を使うことにしました。
―なぜ「トレジャーデータサービス」を選んだのでしょうか?
萬田 コストが低いからですね。「Hadoop」を使って運用するには、専門的な知識を持ったエンジニアが必要になるのですが、まずそういったエンジニアを確保することが大変なんです。さらに、高度なスキルを持ったエンジニアを採用すれば、高いコストもかかるわけです。人材だけではありません。さらに、システムを自前で構成するとその費用もかかります。
―コストの差はどのくらいですか?
萬田 試算をしてみたところ、自社で全てを用意するケースと比べ、「トレジャーデータサービス」利用するとおよそ5分の1程度におさまったと思います。
―導入はスムーズに行きましたか?
萬田「Fluentd」の設定をするだけでしたので、一週間くらいですぐに運用できました。
プッシュ通知以外の位置情報の活用?
―「プロファイルパスポート」をプッシュ通知でメッセージ送る以外の目的で利用する事例が増えているそうですね。
酒田 「特定のエリアにいる人にプッシュ通知を送ることができる」ということは、「どのような人が、どのエリアに、いつ入ってきたのかがわかる」ということでもあります。そして、このログデータを貯めることができますので、マーケティングの基礎データ収集ツールとして、この「プロファイルパスポート」をお使いいただいているお客様もいらっしゃいます。
― 特定のエリアに入ったユーザーが「どのような人なのか」は、なぜわかるのでしょうか?
酒田 ユーザーの属性は、まずそのアプリを提供している事業者さんが持っているデータからわかります。例えば、会員IDと紐付けをすれば、 「どんな属性の人が、いつ、どのエリアに入ったか」というログを貯めることができます。
―会員データなどと連携するわけですね。
酒田 私たちが持っているデータからわかることもあります。許諾を取れたユーザーに限りますが、そのユーザーの「保有するアプリ」や「ウェブサイト」の閲覧履歴、「どんな店舗に設置したビーコンに反応しているのか」などの情報を私たちは持っていますので、そのデータを提供することもありますね。こういったデータを分析してマーケティングに利用しているようです。
インバウンドにはO2Oをこう使え!
―現在、新しいソリューションを開発しているそうですね。
酒田 トレジャーデータさんと共同で、「インバウンド(訪日外国人)向けのO2Oソリューション」を開発しています。
―どのようなソリューションですか?
酒田 私たちの持っている仕組みは、お伝えしてきた通り「特定のエリアにユーザーが入ったタイミング」で、「情報を送ったり、ログを取ったりできる」というものです。これをインバウンド観光向けにしたのがこのソリューションです。
―具体的にはどのようなことができるのでしょうか?
酒田 まず「情報を送る」という面から考えますと、海外から日本に来たユーザーに、「入国したタイミング」や、「特定のエリアに入ったタイミング」、「店舗に近づいたタイミング」などで情報を提供することができますよね。また、「海外からのお客様が店舗に近づいたこと」を、店員にも通知します。すると、店舗での接客も最適化できるというわけです。
―外国人観光客と店舗の双方にメリットとなりそうですね。
酒田 また、「ログを取る」という機能からも、もちろんできることがあります。既に何社かに導入いただいているのですが、訪日外国人観光客によく使われるアプリにこの仕組を入れれば、「日本国内をどのように移動するのか」「どのような店舗で買い物するのか」「どのようなクーポンが使われるのか」といったログが取れるわけです。このログを分析するBIツールも開発中なのですが、このデータを提供すれば、マーケティングの面からすごく価値がありますよね。これが今進めている「インバウンド向けのO2Oソリューション」です。
―最後に、今後の展望を教えてください。
酒田 私たちの仕組みだけあれば事足りるようなサービスを目指して開発を続けていきたいと思っています。例えば、プッシュ通知をアプリではなく、ウェブ上でできるようにしたり、機械学習や人工知能を取り入れて配信を最適化したりといったことですね。
萬田 マーケティングオートメーションという言葉も流行していますが、私たちも「全てのチャネルに、いいタイミング、いい場所で自動的に情報が配信できるプラットフォーマー」になっていければいいなと考えています。しかし、プラットフォーマーはひとりで生き残るは難しいものですよね。ですから、きちんとみんなで発展していけるエコシステムを作っていければいいなと思っています。
酒田 現在、アプリを運営する事業会社さんだけではなく、ソリューションやプラットフォームを提供する会社に「プロファイルパスポート」が採用されるケースが徐々に増えています。位置情報に関する機能の基盤として使っていただいていて、いわば「プラットフォームのプラットフォーム」といったイメージです。今後は、こういった取り組みもどんどん加速させ、「位置情報と言えば、ビーコンと言えば『プロファイルパスポート』だよね」と認識してもらえる位置付けを目指していきたいですね。
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