プリンターの故障をデータから予知する
― ここまで「生産工程におけるIoT」について伺いましたが、一方で「製品として世に出されたモノ」からデータを取るやり方もありますよね。高浜さんがいらっしゃるJBグループの3Dプリンターへの取組みが、まさにその形だと伺いました。高浜さん、御社の概要を教えてください。
高浜 私たちJBアドバンスト・テクノロジーは、数々のソリューションを提供しているJBグループの中で、製品開発製造の役割を担っているソリューションメーカーです。近年、当グループ会社が3Dプリンターの販売・保守サービスを展開しているのですが、その「保守サービスのレベルをあげる」目的で、お客様のところに設置してある3Dプリンターからデータを集め、故障が起きる予兆を分析し、メンテナンスを提供しています。
―データはどう集めているのですか?
高浜 「Armadillo」を使っていますね。稼働状況は「Treasure Data Service」へ送れられますので、そこで分析をしています。
―なぜこの取り組みを始めたのですか?
高浜 3Dプリンターの販売、保守サービスを行っている競争相手との差別化が目的です。
―導入までにかかった期間は?
高浜 「こんな取り組みができるかも」と気がついたのは、去年の春でした。そこから半年くらいかけて今の仕組みを考えましたね。
―苦労したことがあれば教えてください。
高浜 集めたデータを活かすには、当然ながら専門知識が必要ですよね。私は元々3Dプリンターのエンジニアではないので、こ の取り組みを進めるにあたり専門のメンバーとやり取りするために少し勉強が必要でした。
―収益化はどのように?
高浜 今は小さいスタートだと思いますが、将来的にはどんどん大きくしたいです。収集したデータを分析することで生まれる付加価値で、保守サービスをもっと拡大していきたいですし、このノウハウを別のサービスで展開していきたいという思いもあります。
― データを送信することに難色を示すお客様はいらっしゃいますか?
高浜 それほど多くないと聞いていますね。元々この仕組みを導入する前は、メンテナンスの担当が現地に行ってログを自分で取り出して「どこが壊れている」って見ていたので、データを見られることに抵抗があるお客様は 少ないと思います。ただ、勝手にデータを取られるのは抵抗があると思いますので、事前に収集するデータのサンプルを提示し、 一件一件承諾をいただいて実施しています。
―説明すればわかっていただける?
高浜 結構大変なんですよ、3D プリンターを稼働させるのって。ひとつ出力するのに10時間とか平気で掛かっちゃう。極端な話ですが、10 時間で終わる出力の9時間目で機械が故障したら、全部ダメになってしまうわけです。ですから「故障する前に直してくれるんだったらデータ送りますよ」というお客様が多いですね。お客様にもメリットがあれば、OKしてくれるのだと思います。
堀内 別の業界でもそういった話はよく聞きますね。データを取得する際に、そのデータを提供してくれる人にメリットを提供すれば許諾をくれることは多い。でも、提供者にメリットを言わないと「勝手にデータを吸いとってお金儲けしようとして」って悪感情を持たれてしまう可能性はありまして。
高浜 「データの扱い」は非常にデリケートな問題で。3Dプリンターって、中に小さなパソコンが入っているんです。それを利用してしまえば、そのままそこからデータを持ってくることは技術的に可能なんですよ。でも「そのパソコンにつながる」ということは、「外から操作できる可能性もある」ということなんです。だから、それとは別にログを渡すためだけの別系統を用意して、そこからデータをとるようにしています。
岩木 あえて二系統作っているのは、そういう理由があったんですね。
高浜 そうですね。お客様のネットワークには参加しないで、ログをとっているだけという形で全体をデザインしました。
岩木 なるほど。工場でもそのパターンはあるかもしれませんね。竹之下工場でも「外からコントロールされる」のが怖いので、別系統をとることが多いと思います。メインの「生産システムのネットワーク」とは別系統で、もらったデータを送信するという形です。「Armadillo」が重宝されているのもその部分なんです。工場のネットワークとは関係なく3Gモバイル回線を利用した通信ができるので。
岩木 現在、3G通信は月額どのくらいで利用できるものなのですか?竹之下月額数百円くらいですね。
岩木 1台当たり?
竹之下 1台当たりです。でも工場に数百台設置しても全部が3G通信を行う必要はないんです。工場のデータを全て一箇所にまとめて、1台からアップロードすればOKです。岩木だったら導入しやすいですね。
クイックスタートで競争を生き残る
―今後、どのような企業がIoTを導入していくと予想されますか?
岩木 社長が決断できる会社。そういったところからIoTの導入は進んでいくでしょうね。
竹之下 そうですね、IoTの導入は事業戦略に左右されますからね。「やるぞ!」って本当に乗り気になっている会社は動きも早いですよ。それと、今回のJBアドバンスト・テクノロジーさんのように成功事例が出ると、それに追随する企業も出てきて、どんどん事例が増えて盛り上がってくると思います。
―読者の皆様にメッセージをお願いします。
高浜 さまざまなメディアでIoTが話題になっています。それでも、身近に導入しているところはまだ少ないようなので、ぜひ話を聞きに来て欲しいですね。
岩木 現在、IoTという言葉がとても注目されていて、私が担当する製造業のお客様も興味を持っている方が多くいます。でも、導入までの一歩を踏み出せない企業が多いのが現状です。ですから、まずはチャレンジしてみて、そこからブラッシュアップできる仕組みを作っていけたらいいなと思っています。
堀内 とにかく早くトライアルしてみて欲しいと思いますね。試したものがよかったら、クラウド型サービスですから、そのまま本番環境に簡単に適用できるんです。そして、成長に合わせて規模を柔軟に変更できるということも、クラウド型のメリットのひとつです。
竹之下 IoTに取り組むべきか、取り組まざるべきか」という問いの答えはすでに出ています。企業は競争戦略として「IoTに絶対取り組まざるを得ない」のです。しかし、まだIoTの導入にあたっては、どの企業も手探りの状況です。ですから、まずはスモールスタート、クイックスタートでとりあえず始める。そして始めてから改善していく。そんなプロセスを回す必要があると思います。そのプロセスをぜひ一緒に行えればいいですね。
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