データ解析の伝道師、鈴木理恵子さんがお届けする連載企画。第1回は、年間来店者数のべ4億人を誇り、約3000店の飲食店を展開する株式会社すかいらーくへ直撃!同社は、昨年スマートフォン向けの「ガストアプリ」をリリースし、約1ヶ月半で100万ダウンロードを突破。今回は、その「ガストアプリ」を立案し、業界の注目を集めているマーケティング部の神谷勇樹氏に話を伺った。 [sponsored]
鈴木理恵子 トレジャーデータ株式会社ソリューションアーキテクト/エヴァンジェリスト。東京女子大学在学中、ギター製作の道を志し専門学校へ。しかし、卒業後はIT業界へ。株式会社ミクシィなどを経て2013年より現職。
神谷勇樹 株式会社すかいらーくマーケティング本部インサイト戦略グループディレクター。 東京大学大学院工学系研究科修了。卒業後、ボストン・コンサルティング・グループグリー株式会社を経て、2013年より現職。
「勘と経験の経営」だけでは通用しない3000店舗
鈴木 はじめに、神谷さんが貴社で担っている役割を教えてください。
神谷 「すかいらーく」が最初に店舗を出店したのは、今から40年以上前、1970年のことです。現在は約3000の店舗を展開していますが、ここまでは創業者や従業員の「勘と経験」で成長してきました。しかし、この規模からの「さらなる展開」を考えると「今までのやり方」に加えて、「新たな戦略」が必要になると考えたんです。
鈴木 その「新たな戦略」とは、どのようなものなのですか?
神谷 「データとサイエンスをうまく融合させる」という戦略です。それが現在私の担当しているミッションになりますね。
鈴木 今までにも「データに関する取り組み」をされていたのでしょうか?
神谷 大学院を卒業して、ここが3社目になるのですが、卒業後、最初に入社した経営コンサルティング企業、前職となるモバイルゲーム企業のどちらでも、「データ分析を起点に付加価値を創出する」という業務をずっと担当していました。
「マスのアプローチ」から「OnetoOne」へ
鈴木 そういった経験から「ビッグデータを活用した施策」を行っているんですね。
神谷 「すかいらーく」では、今まではどちらかというと「マスなコミュニケーションに頼ったアプローチ」を行っていたんです。しかし、個々のお客様を理解して、そのお客様にどのようにコミュニケーションをとるかという部分にフォーカスしていかなければいけないな、と。
鈴木 いわゆる「OnetoOneマーケティング」を目指していかねばと?
神谷 そこで大きな鍵になるのが「モバイル」なんです。モバイルを活用してお客様にメッセージを伝えたり、それが本当に響いたか、そうではないのかを調べたりして、効率よくターゲッティングしたアプローチにすることを目指しています。
鈴木 今まではモバイル向けに取り組みはされていたんですか?神谷「モバイルサイトから利用できるクーポン」はあったんです。でも、そのやり方は「マス」でした。どのお客様にも「完全に同じクーポン」を発行していたんですよ。鈴木それは「今まではデータがなかったから」というのもあって?
神谷 そうですね。例えば、お子さんがいないお客様に「キッズ向けのクーポン」を出しても全く意味がないじゃないですか。だから「お客様の属性」だったりとか「利用履歴」だったりといったデータを集めて、うまく運用したかったんです。
昨年「POSデータの分析基盤」を構築したのですが、一人ひとりのお客様のことをより理解するために、モバイル活用の本格的な取り組みを始めたんです。
「ベンダーの悲鳴」が聞こえた開発スケジュール
鈴木 いよいよモバイルアプリを仕掛けていこう、と。開発からリリースまでの時間が相当短かったと伺いましたが?
神谷 「ベンダーさんに発注してからリリースまで1ヶ月半」という非常にタイトなスケジュールで進めましたね。
鈴木 1ヶ月半!(笑)それは相当厳しいですよね。実際その進行で?神谷開発ベンダーからは「ちょっと無理です」みたいな話に当然ながらなるわけです。それで「どの辺りが無理ですか?」なんてやりとりをしていたのですが、その「大きな障害」として、「ログをどういうふうに落としていけばいいのかわからない」ですとか「どういう風にデータを収集して、データベースに貯めていくのかが難しくて時間がかかります」って話があったんですよ。
鈴木 今まで行っていた「マスのアプローチ」から、「データを蓄積して、いかにお客様一人ひとりを理解する」という課題があって、今回「ガストアプリ」に取り組まれたわけですから、その部分は「絶対に譲りたくない一番のポイント」だと言えますよね。
神谷 そこで、鈴木さんの「TreasureDataService」を導入しなければ、と(笑)
鈴木 ありがとうございます!
神谷 トレジャーデータさんのお話は以前から伺っていて、採用にあたっては、主に二つ理由がありました。まずは「非常に簡単に導入ができる」という点です。
鈴木 実際に試されて、いかがですか?神谷おかげさまで、当初の目標通り1ヶ月半でリリースができました。実は、「オンタイムでのリリースは難しいかもしれない」と、覚悟もしていたので、まずそこがとても大きかったですね。導入に関してトラブルが起きたという話は全くありませんでしたし、非常にスムーズに進めることができましたね。本当に簡単だったんだな、と。
鈴木 採用していただいた「もうひとつの理由」もお聞かせいただけますか?
神谷 もう一点は「分析のしやすさ」といったところですね。これは「フレキシブルな対応が可能である」という意味です。私たちは「AWS」の「AmazonRedshift」を使っているんですけれども、「AmazonRedshift」以外のサービスを使うことになった場合ですとか、そもそもデータの量がどのくらいになるかというのも、正直まだよく読めていなかったんですね。そういった、「まだ決まっていない部分に柔軟に対応ができる」というところも、「TreasureDataService」の魅力だと感じて導入を決めました。
鈴木 ありがとうございます。今回収集しているのは、具体的にはどのようなデータですか?神谷いくつかフェーズがあるのですが、現段階では「履歴」。ウェブサービスと同じように、ユーザーがそのアプリを使ってどんなものを見たのか、あるいはどんなクーポンを使ったのか、というようなことです。アプリの中で、ネイティブの部分と、ウェブビューの部分があってその両方を集めていますね。
鈴木 私どものサービスに貯めていただいたデータをその後「AmazonRedshift」にバッチで投げるといったイメージですか?
神谷 そうです、そうです。「TreasureDataService」で、まずデータの加工を行っています。さっき話したネイティブとウェブビューのログの統合とか。このアプリには「会員登録しなくても使える部分」と「会員登録した方のみが使える部分」があるんですけど、「ログイン前のID」と「ログイン後のID」があって、その二つを紐付けたりといった処理もしています。そうやって、一次集計したものを「AmazonRedshift」へ投げているわけです。
爆速で100万 DLを突破した 「ガストアプリ」の効果は?
鈴木 本格的に「ガストアプリ」のキャンペーンをはじめた10月から、わずか1ヶ月半で100万ダウンロードを突破したと聞きました。「クーポンの効果」って実際どうですか?
神谷 セグメントしてターゲティングしているわけですから、やはり通常よりも効果があって、「反応率」はものによって4倍、5倍といった数字があがっています。
鈴木 4~5倍もあるんですか?
神谷 まだデータの蓄積が足りていないので、これからどんどん改善すると思いますが、この段階としては納得できる数字だと思います。
鈴木 既存の媒体と比べてどうですか?
神谷 新聞の折込チラシでクーポンの配布もしているんですが、それってモバイル会員の10倍の数を発行しているんです。ですが、実際のクーポン利用者数は、折込チラシのクーポンもモバイルのクーポンも同じくらいなんですよ。そういう意味では「クーポンをお客様にうまく届ける力」は、折込チラシの10倍くらいだと考えられますね。
鈴木 10倍ですか!?それは大きいですね。
神谷 でも、誤算もあります。もっとダウンロードされると思っていたんですが、障壁が大きいようで。登録率は意外と高かったんですけれど。「予想の逆」となりました。
鈴木 アプリの利用層はいかがですか?
神谷「“平均以上頻繁未満”で来店してくれる層」に、かなり刺さっています。「その層よりも少しライトなユーザー」にどのようにアピールするかが今後の課題ですね。
鈴木 最後に「ガストアプリ」に関して、現在考えている施策を教えてください。
神谷 分析をどんどん回して精度を高めていきたい。それと、今はセグメントを人力でやっているのですが、その自動化に取り組んでいて、それを実現しようとしています。
鈴木 ちなみに「ダウンロード数の目標」ってあるんですか?
神谷 2000万まで頑張れればいいな、と思っています。先はまだちょっと長そうな気がしていますけど(笑)。
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