2016年末に発足したあるコミュニティが、積極的な活動を展開している。その名は「デジマ女子部」。女性デジタルマーケターが参加するコミュニティだ。この「デジマ女子部」はどのような経緯で生まれ、どのような活動を行っているのだろうか。本稿では、運営の中心となっている株式会社ウィルゲートの中澤梨沙氏とトレジャーデータ株式会社の池内聖子氏、「デジマ女子部」の顧問を務めるオイシックスドット大地株式会社のCMT(チーフマーケティングテクノロジスト)である西井敏恭氏の3名に話を伺った。
女性マーケターの2つの悩み
― 「デジマ女子部」はどのようなコミュニティなのか教えてください。
中澤 「デジマ女子部」は、デジタルマーケティングに取り組む女性の集まりです。デジタルマーケティングって「リスティング広告」や「マーケティングオートメーション(以下、MA)」など、様々な領域が含まれますよね。施策を実践する女性マーケターや、テクノロジーベンダーの女性の方にスピーチをいただき、各領域を基礎から学べるイベントを開催しています。終了後はつながりが作れるように必ず懇親会も行っています。
― 参加者数はどのくらいですか?
中澤 2016年の11月に第1回のイベントを開き、これまでに6回のイベントを運営してきました。参加者はのべ180名ほどですね。リピーターも1割くらいはいます。
中澤 梨沙(なかざわ りさ)
株式会社ウィルゲート コンテンツマーケティング事業部マーケティングユニット。2012年に新卒でウィルゲートへ入社。セールスを1年経験した後、社内でのマーケティング部設立に参加。
― 中澤さんご自身はどのようにデジタルマーケティングと関わり始めたのですか?
中澤 私は2012年に新卒でウィルゲートに入社したのですが、1年セールスを経験した後にマーケティングの担当になったんです。まずは単発のレポーティングサービスを導入したりしましたね。その後はSEOやリスティングで「リードの獲得」を行ったり、MAを導入して「リードナーチャリング」を担当したりしています。
― 同じく運営者の池内さんは、どのようにマーケティングに携わり始めたのですか?
池内 私はリクルートで「ゼクシィ」の事業企画を3年半担当した後、 アスクルへ入社しました。アスクルでは、販売代理店の営業支援を5年間受け持ち、その時にERPやマーケティング領域のITを経験しています。その後、海外留学を挟んでトレジャーデータへ入社しました。トレジャーデータへはマーケティング担当として入社しましたが、IT業界のマーケティングは初めてでした。
― 現在は担当されてどのくらいですか?
池内 2014年に入社しましたので、産休を挟んでいますが4年弱ですね。 現在はオンラインとオフラインの両方のマーケティング、他にPRも担当しています。
― 「デジマ女子部」立ち上げのきっかけを教えてください。
池内 私は女性マーケターが2つの悩みを抱えていると感じたんです。まずは、流れの早いデジタル業界で「マーケターとしてきちんとスキルアップしたい」という悩み。そして、「女性マーケターとしてどのようなキャリアパスを選択すればいいのか」という悩みです。「悩みを解決するロールモデルとなるような方とつながりたい。そして、自分も成長したい」。そういった願いを実現するきっかけとなる場所が作りたいと考えていたんです。そこで、西井さんに相談しまして、「顧問」というアドバイザーのような役割をお願いしました。
池内 聖子(いけうち せいこ)
トレジャーデータ株式会社 マーケティングスペシャリスト。「デジマ女子部」運営。株式会社リクルート、アスクル株式会社での勤務後、海外留学。2014年トレジャーデータに入社。
スピーカーは「初めて」が8割
― 西井さんはなぜ顧問を引き受けられたのですか?
西井 「この業界が活性化するためには、女性が絶対に必要だ」と考えていたからです。私はECのマーケティングを「ドクターシーラボ」で6年半担当し、さらに「デジタルマーケティングをきちんと日本に普及したい」と考え、デジタルマーケティングのコンサルティングを行うシンクロも設立しました。今は「オイシックス」でCMTも務めており、4年目を迎えています。そういった経歴なので、デジタルマーケティングに関する講演やセミナーでよく話すのですが、とにかく「女性が少ないな」と感じていたんです。
― イベントに登壇される女性が少ないということですか?
西井 「登壇する女性」も「参加する女性」も、どちらもです。実際に「おっさんばっかりだから行きたくない」って声を女性から聞くんです。でも、デジタルマーケティングが活性化するには新陳代謝が必要です。あのアイドルグループも「初代神7」のままではここまでの人気はなかったと思います。メンバーの入れ替わりが人気を生んだわけです。「だから、女性や若手を育てなくてはいけない」。そう考えていた時にちょうど「デジマ女子部」の顧問に声を掛けてもらいました。
西井 敏恭(にしい としやす)
株式会社シンクロ代表取締役。オイシックスドット大地株式会社 執行役員CMT。株式会社ドクターシーラボでECマーケティングを統括した後、2014年にシンクロを設立。同年、現オイシックスドット大地に参画。
― 「デジマ女子部」の特徴はどのような点ですか?
池内 女性スピーカーにとって、「オーディエンスが全員女性」というのはとても気がラクなんです。 参加者からも「他のセミナーよりも質問しやすい」という声をもらいますね。実際に、かなり活発なディスカッションがありますし、女性だけに限定した効果はあったのだと感じています。
中澤 「デジマ女子部」でスピーチする方の8割くらいは初めて人前で話す方ですね。それでも、ここで初めてスピーチをしたある化粧品会社に勤める方は、後に「アドテック関西」という大きなイベントで登壇もされました。
― 最後に今後の展望をお聞かせください。
西井 このコミュニティがもっと活発になれば、優秀な女性マーケターがすぐにわかるようになると思います。これまでは優秀な女性でも、結婚・出産の後に派遣で働いていたりしたわけです。もちろん知識やスキルを提供することは大切ですが、それだけではなく、「デジマ女子部の人なら大丈夫だね」と女性のライフイベント後の再就職を手助けできるコミュニティになればいいと思っています。アメリカではCMO(最高マーケティング責任者)を務める女性がたくさんいます。特にBtoCにおいては、実際のコンシューマーは女性であることも多いですよね。ですから、もっと女性のマーケターが増えて欲しいと思います。
中澤 「デジマ女子部」からロールモデルとなるような有名なマーケターを輩出できればうれしいですね。今は単なるコミュニティですが、「デジマ女子部出身なら安心だ」と思われる組織になりたいんです。マーケティングは幅が広すぎて、自分がどのくらいわかっているのか、自分が今どこにいるのかを掴むのがとても難しいと感じています。だから、「マーケターとしてあるべき姿に向かって、自分は着実に学んでいる」とわかるコミュニティでありたいんです。「自分がマーケターとしてどこにいるのか」が掴めれば、産休・育休後にマーケターとして再び働くことができる、前向きなモチベーションになると思います。
池内 デジタルマーケティングには、インターネットさえあればできる業務もたくさんありますよね。ですから、デジタルマーケターはスキルがあれば地球の裏側でも働ける職種だと思います。自身のライフイベントや家族の都合に左右されることも多い女性にとっては最適な職種の一つではないでしょうか。しっかりと基礎スキルを習得して、キャリアを断絶させずに、世界のどこにいても活躍する。そんなデジタルマーケターが「デジマ女子部」からたくさん出て欲しいですね。
デジマ女子部 #7 次回イベントのお知らせ(下記リンクからどうぞ)
2017/12/05(火) 16:00~@TECH PLAY SHIBUYA
デジタルマーケターの方も、これからそのキャリアをスタートする方も、こんな悩みはありませんか? 「何から学んだらいいのかわからない!」「基本から知りたい!」「デジマ女子部」では、他社の事例をただ聞くことだけに満足せず、マーケターとしてひとつひとつの施策の知識をしっかり深めることを重視しています。