躍進が際立つフランスのスタートアップ。「La French Tech(フレンチテック)」を旗印に展開されるフランスのオープンイノベーションは、単にスタートアップを支援するのではなく、「いかにしてスタートアップを加速させるか」という点が特徴的だ。今回は、6月にパリにて開催された注目のイベント「Viva Technology Paris 2017(ビバ・テクノロジー)」を、川波朋子氏によるレポートでお送りする。日本企業でマーケティングに従事し、現在パリに在住する川波氏の視点から、刺激とヒントに満ちたフランス・スタートアップの現在地が垣間見えるのではないだろうか。
著者プロフィール:川波朋子 2009年日本ケンタッキー・フライド・チキン入社。ソーシャルメディアを中心としたWebマーケティング推進に携わる。2014年リクルートコミュニケーションズ入社、既存メディアの新規集客、新たなソリューション領域における機能開発およびビジネス推進を担当。2016年渡仏、現在パリ在住。学生生活と同時に、アート、マーケティング領域を中心に幅広く日仏をコネクトする立場としての活動を開始。 LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/tomokokawanami/ Facebook: https://www.facebook.com/tomoko.kawanami.7/
参加スタートアップは5,000社!「Viva Technology」のユニークなスタイルとは
6月15~17日の3日間、パリのPorte de Versailles(ポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場)で開催されたフランステクノロジースタートアップのイベント、「Viva Technology」に参加してきました! 今年で2回目となるこのイベントは、世界3位の広告代理店Publicis(パブリシス)グループが主催する官民をあげた国際テクノロジー展示会です。パリでは6月に入ると、バス、メトロの駅などあちこちで大々的なPRが繰り広げられていて、主催者の力の入れようがひしひしと感じられました。
開催の前日、6月14日には、豪奢なパリ市庁舎で関係者を集めたキックオフイベントが行なわれ、アンヌ・イダルゴ パリ市長、PublicisグループCEO モーリス・レビ氏をはじめ、La poste(フランス郵政公社)、BNPパリバなどスポンサー企業各社のトップが出席し、「Viva Technology」開催にあたってのメッセージを発信。世界各国からやってきたイノベーター達を歓迎しました。
「Viva Technology」には、約200カ国から5,000社のスタートアップ、1,000人の投資家と500名のスピーカーが参加し、来場者は3日間を通して約5万人を数えます。スタートアップが大企業と出会い、コラボするキッカケを得てビジネス革新を図ることを目的とした展示会です。今回私は、日本人として唯一のスピーカーである、トレジャーデータ社堀内健后氏の通訳として参加しました。
フランスが進めるスタートアップとオープンイノベーションの関係性を端的に示すユニークなスタイルが、当イベントにはあります。カンファレンスの開催や企業ブースが会場内に並のは日本のITテクノロジー系イベントと同様ですが、ユニークなのはスポンサーである大企業がイベント開催前に発表した課題に対しソリューションを提案し、審査を経て選ばれたスタートアップが「そのスポンサーの区画内にブースを出す」というものです。
例えば、スポンサー企業の1つであるエールフランスは出展に先立って、ビックデータ、VR、顧客の旅行体験向上のためのAI活用、従業員エクスペリエンスの改善に関する課題を提示しました。それに対し32社のスタートアップがプレゼンし、最終的に選ばれた4社が「エールフランス『フューチャー・オブ・ザ・トラベル』ラボ」の協働社としてブースを構えました。こういったフランス国内でも名だたる老舗企業が、果敢にも自らの課題をオープンに曝け出し、スタートアップの先進テクノロジーを通じてイノベーションを起こそうという姿勢そのものに、日本企業で育ってきた私は大きな衝撃を受けました。
また、会期最終日の土曜日はファミリーデーとして、一般の家族連れにも開かれたイベントとなっていました。とりわけ子どもたちには、VRやロボットのコンテンツが大人気の様子でした。
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